「メアドを晒したくない」を解いた小さな発明
2010年、ある開発者が思いついたのは、本物のメールアドレスを隠したまま使える半永久的なエイリアスだった。サイトやサービスごとに専用のアドレスを発行しておき、迷惑メールが増えたり不要になったりしたら、そのエイリアスだけをピンポイントで止める。プライバシーを守りたい人の、地味だが確かなニーズに応える仕組みだ。
派手さはない。それでも「自分の本当のアドレスを知られたくない」という不安は、誰にでも覚えがある。明確な課題をひとつ選んで、そこだけを丁寧に解く。スタート地点はそこだった。
初年度は月50件。それが10年で月3,500件に
兄弟二人で数ヶ月かけて初版を作り、2010年7月に公開した。立ち上がりは静かだったという。登録は初年度こそ月50件ほど。だが2013年には月1,500件まで伸び、現在は月3,500件前後になっている。
売上もおよそ18ヶ月で倍増する、緩やかな右肩上がりを続けた。今では月8,000ドル規模に達している。一気に跳ねたのではなく、複利のようにじわじわ積み上がってきた数字だ。
広告に頼らず、改善を10年積み上げる
特筆すべきは、有料広告にほとんど頼っていない点だ。派手なキャンペーンを打つかわりに、説明動画を作る、サイトを作り直すといった改善を地道に重ねてきた。費やした時間は10年。短期で勝負をかけるやり方とは正反対の進み方で、ここまで来た。
ドコくる的に見る:寝ている間も価値を生む「ストック型」
これは典型的なストック型の個人開発だ。一度作った仕組みが、寝ている間も少しずつ価値を生み続ける。爆発的に跳ねることはない。そのかわり、辞めない限り積み上がっていく。
副業として参考にするなら、押さえどころは二つある。ひとつは、明確な課題を解くこと。ここでいえば「メアドを晒したくない」という不安だ。もうひとつは、成果が出るまでの数年を耐えられる設計にしておくこと。すぐに結果がほしい人には向かない。けれど本業を持ちながらコツコツ資産を育てたい人には、相性のいいモデルだろう。続けられる仕組みを作れたこと。それがこの事例の、本当の勝因だと思う。